2025年2月15日の投稿[17件]
ジャーナリストの死亡、2024年は過去最多 7割がイスラエルによる殺害 https://www.cnn.co.jp/world/35229417.htm... @cnn_co_jpより
Tilda Swinton decries ‘internationally enabled mass murder’ at Berlin film festival
https://www.theguardian.com/film/2025/fe...
https://www.theguardian.com/film/2025/fe...
「妊娠した男性」が世界的に有名になった後に起こったこと | ニュースな本 | ダイヤモンド・オンライン https://diamond.jp/articles/-/358316
https://chng.it/xhJMHFD97G
署名しました。
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大きくなったら女の子 - 御厨稔 / 第14話 麗音の場合③ | モーニング・ツー ↓
[ https://comic-days.com/episode/140796027... ]
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ウルデプ
モブががっつりいる
差別的な表現もあります。ご注意ください。
ふらりと入ったバーのでのことだ。カウンター席で隣に座った相手とちょっとした話で盛り上がった。相手の顔が瘡瘍だらけだなんてどうでも良かった。接客業をしていれば、外見が定型(と日本社会から思われているもの)から外れた人とも対面する。けれど大事なのは相手にこちらの説明を聞く姿勢があるか否かであって、外見は一切関係ない。少なくとも私の価値観はそうだった。その価値観で言えば、隣の客は最上だ。
「人をランク付けするのもどうかと思うけど」
相手に指摘され、ごめんごめんと謝った。初対面だが酒のおかげで話が弾む。プロナウンは? と聞けば、he/himと返ってきたので、相手のことは「お兄さん」と呼ぶ。私は「お姉さん」だ。お嬢さんはやめてもらった。そんな歳に見えるなら、化粧の種類を変えなきゃならない。
「ごめんね。俺ちゃんこう見えてお姉さんのご両親世代だから」
「呼び方変えてくれるなら良いですよぉ。何回言っても変えない人だっているんだし」
「相手が嫌がってる呼び名で呼ぶのは罪だよねえ」
言いながら、お兄さんはビールを頼む。チョコレートスタウトだ。この日本では、バレンタインの今日にぴったりなビール。
自分も同じものを頼み、お兄さんの横顔を見る。日本の文化に詳しくて、日本語のイントネーションも自然。今時は珍しくないが、長年こちらに住んでいるか、私と同じく海外ルーツの方だろう。こうした推測も良くないが、客の見た目が『外国人風』であるだけで、バイトの私に接客を回そうとする社員がいる。その為、すっかり人の見た目を気にするようになってしまった。良い気分だったのにうっかりその社員の顔を思い出して、相手の胸に妄想の中で斧を振り下ろす。
「銃もいる?」
お兄さんに聞かれたが断った。過去にクレー射撃を体験したことがあったけれど、散々な結果であったからだ。斧投げバーでは命中したのに、人の才能はわからない。ちなみにお兄さん達は仕事で日本に来ただけだった。
スタウトのカカオの苦味にピッタリな、分厚いステーキをお兄さんが注文する。私はそこまでお腹が空いていなかったので、サラミとチーズのセットを追加した。
いつの間にか話は恋人についてのことになっていた。古今東西、多く人が経験する恋の話は、こうした場では鉄板だ。理解しやすく相手の反応も読みやすい。ただ私はその点で、多くの人から理解されづらいという悩みを持っていた。しかし初対面かつ二度と合わない相手であるからこそ話せることもある。お兄さんなら大丈夫かと打ち明けた。
「とはいえ私はアセクシャルなんで、相手のこと性的に好きになれないし、セックスもしたくないんですけどねえ」
「そっかー」
お兄さんはビールを飲みながら頷いた。アセクシャルって何? なんてことも聞かず、ただ頷くだけの反応が好ましい。
「性嫌悪はないし性欲もあるんですけどねえ。でもしたくないし必要とは思えなくて、まあでも出来るから仕方ないな。でするんですけど、相手も私のことアセクシャルって知ってるんで、なんか変な勘違いしてるっぽくて」
「どんな?」
「自分を愛してるからセックスしてくれてるんだ〜。みたいな」
「最悪じゃん?」
お兄さんの言葉に私は笑う。
「マジで無理ですよね〜。義務感でするセックスってありますよねえ」
「わかる〜。でも俺ちゃんどっちかっていうと義務感でして貰う方」
「最悪じゃん〜」
「誘ってくれる時もあるけど、俺の方が性欲強くてさあ。でも九割くらいは一回断られたら引き下がるから」
「十割打者目指しましょーよ」
「それは俺ちゃんの性欲が爆発しちゃう」
言われて思わず吹き出した。
そして私は奥の席にいる男性に声をかけた。
「だそうですけど」
お兄さんと一緒にこの店に来た男性が、お兄さんの恋人なのは分かっていた。お兄さんは恋人の性別を隠さなかったし、私と話している最中、わざとらしい視線を男性に送ってもいた。というか恋人のちんこがデカくて最高という話もあった。そっかー。で流したけれど。
恋人さんはお兄さんが頼んだビールを飲みながら、私の言葉にチラリと一瞥を向け、あからさまに無視をする。
お兄さんが「つまんにゃい」と唇を尖らせた。
つまらないと相手に言って、それが許されることが良いな。と思えた。私はお兄さんに言った。
「良い恋人さんですね」
「でしょ?」
お兄さんは笑った。私はもう一度、その奥へと声をかけた。
「お兄さんの恋人さんも、お兄さんに対してそう思いません?」
恋人さんはヘーゼルナッツの色をした瞳だけを動かし、肉を飲み込んだ後、「それは思う」と言った。
「あとはもっとうるさくなければ最高だった」
「口は俺ちゃんのチャームポイントですけど!」
「知ってる」
恋人さんが急にお兄さんの方を向いたので、二人の唇の距離が近くなる。お兄さんがギョッとして少しだけ後へ引いた。恋人さんがおかしそうに笑ってみせる。
「まあ、恋愛なんて妥協点の探り合いだろ。どうしたって譲れない点はお互いに妥協し合ったんだ。腹の立つこともあるし、セックスはもう少し自分一人でやってくれるとちょうど良いが、俺は今のこいつが良い」
やはり笑い続ける恋人さんを、お兄さんが苦々しげに見た。私はなるほど〜。と思いながら、少しだけ苦いビールに口を付けた。
「私も恋人と、もうちょっと妥協点探ってみますかねえ」
バレンタインを前にして、喧嘩をした相手を思い出す。その他の点はともかく、性行為で相手の哲学にそって愛を証明し続けることは、正直に言って業腹だった。アセクシャルがアロセクシャルの恋人と性行為するのが愛だというなら、アロセクシャルがアセクシャルの恋人と性行為しないのも愛だろうに。
ビールを飲み干すと、私は後学の為に二人に聞いた。
「ちなみに、お二人はどうやって妥協点を探りました?」
二人は顔を見合わせて、少し悩んだあと、こう言った。
「殺し合いをして、最終的に世界を救った後、養い子に説教されながら膝つき合わせて話し合った」
酔っ払いの戯言にもほどがあったけれど、私は「そっかー」と流すことにした。
モブはロマンティックアセクシャルです多分……。どっちかっていうとロマンティック重視。まあモブだから好きに読んで……。
▲たたむ
モブががっつりいる
差別的な表現もあります。ご注意ください。
ふらりと入ったバーのでのことだ。カウンター席で隣に座った相手とちょっとした話で盛り上がった。相手の顔が瘡瘍だらけだなんてどうでも良かった。接客業をしていれば、外見が定型(と日本社会から思われているもの)から外れた人とも対面する。けれど大事なのは相手にこちらの説明を聞く姿勢があるか否かであって、外見は一切関係ない。少なくとも私の価値観はそうだった。その価値観で言えば、隣の客は最上だ。
「人をランク付けするのもどうかと思うけど」
相手に指摘され、ごめんごめんと謝った。初対面だが酒のおかげで話が弾む。プロナウンは? と聞けば、he/himと返ってきたので、相手のことは「お兄さん」と呼ぶ。私は「お姉さん」だ。お嬢さんはやめてもらった。そんな歳に見えるなら、化粧の種類を変えなきゃならない。
「ごめんね。俺ちゃんこう見えてお姉さんのご両親世代だから」
「呼び方変えてくれるなら良いですよぉ。何回言っても変えない人だっているんだし」
「相手が嫌がってる呼び名で呼ぶのは罪だよねえ」
言いながら、お兄さんはビールを頼む。チョコレートスタウトだ。この日本では、バレンタインの今日にぴったりなビール。
自分も同じものを頼み、お兄さんの横顔を見る。日本の文化に詳しくて、日本語のイントネーションも自然。今時は珍しくないが、長年こちらに住んでいるか、私と同じく海外ルーツの方だろう。こうした推測も良くないが、客の見た目が『外国人風』であるだけで、バイトの私に接客を回そうとする社員がいる。その為、すっかり人の見た目を気にするようになってしまった。良い気分だったのにうっかりその社員の顔を思い出して、相手の胸に妄想の中で斧を振り下ろす。
「銃もいる?」
お兄さんに聞かれたが断った。過去にクレー射撃を体験したことがあったけれど、散々な結果であったからだ。斧投げバーでは命中したのに、人の才能はわからない。ちなみにお兄さん達は仕事で日本に来ただけだった。
スタウトのカカオの苦味にピッタリな、分厚いステーキをお兄さんが注文する。私はそこまでお腹が空いていなかったので、サラミとチーズのセットを追加した。
いつの間にか話は恋人についてのことになっていた。古今東西、多く人が経験する恋の話は、こうした場では鉄板だ。理解しやすく相手の反応も読みやすい。ただ私はその点で、多くの人から理解されづらいという悩みを持っていた。しかし初対面かつ二度と合わない相手であるからこそ話せることもある。お兄さんなら大丈夫かと打ち明けた。
「とはいえ私はアセクシャルなんで、相手のこと性的に好きになれないし、セックスもしたくないんですけどねえ」
「そっかー」
お兄さんはビールを飲みながら頷いた。アセクシャルって何? なんてことも聞かず、ただ頷くだけの反応が好ましい。
「性嫌悪はないし性欲もあるんですけどねえ。でもしたくないし必要とは思えなくて、まあでも出来るから仕方ないな。でするんですけど、相手も私のことアセクシャルって知ってるんで、なんか変な勘違いしてるっぽくて」
「どんな?」
「自分を愛してるからセックスしてくれてるんだ〜。みたいな」
「最悪じゃん?」
お兄さんの言葉に私は笑う。
「マジで無理ですよね〜。義務感でするセックスってありますよねえ」
「わかる〜。でも俺ちゃんどっちかっていうと義務感でして貰う方」
「最悪じゃん〜」
「誘ってくれる時もあるけど、俺の方が性欲強くてさあ。でも九割くらいは一回断られたら引き下がるから」
「十割打者目指しましょーよ」
「それは俺ちゃんの性欲が爆発しちゃう」
言われて思わず吹き出した。
そして私は奥の席にいる男性に声をかけた。
「だそうですけど」
お兄さんと一緒にこの店に来た男性が、お兄さんの恋人なのは分かっていた。お兄さんは恋人の性別を隠さなかったし、私と話している最中、わざとらしい視線を男性に送ってもいた。というか恋人のちんこがデカくて最高という話もあった。そっかー。で流したけれど。
恋人さんはお兄さんが頼んだビールを飲みながら、私の言葉にチラリと一瞥を向け、あからさまに無視をする。
お兄さんが「つまんにゃい」と唇を尖らせた。
つまらないと相手に言って、それが許されることが良いな。と思えた。私はお兄さんに言った。
「良い恋人さんですね」
「でしょ?」
お兄さんは笑った。私はもう一度、その奥へと声をかけた。
「お兄さんの恋人さんも、お兄さんに対してそう思いません?」
恋人さんはヘーゼルナッツの色をした瞳だけを動かし、肉を飲み込んだ後、「それは思う」と言った。
「あとはもっとうるさくなければ最高だった」
「口は俺ちゃんのチャームポイントですけど!」
「知ってる」
恋人さんが急にお兄さんの方を向いたので、二人の唇の距離が近くなる。お兄さんがギョッとして少しだけ後へ引いた。恋人さんがおかしそうに笑ってみせる。
「まあ、恋愛なんて妥協点の探り合いだろ。どうしたって譲れない点はお互いに妥協し合ったんだ。腹の立つこともあるし、セックスはもう少し自分一人でやってくれるとちょうど良いが、俺は今のこいつが良い」
やはり笑い続ける恋人さんを、お兄さんが苦々しげに見た。私はなるほど〜。と思いながら、少しだけ苦いビールに口を付けた。
「私も恋人と、もうちょっと妥協点探ってみますかねえ」
バレンタインを前にして、喧嘩をした相手を思い出す。その他の点はともかく、性行為で相手の哲学にそって愛を証明し続けることは、正直に言って業腹だった。アセクシャルがアロセクシャルの恋人と性行為するのが愛だというなら、アロセクシャルがアセクシャルの恋人と性行為しないのも愛だろうに。
ビールを飲み干すと、私は後学の為に二人に聞いた。
「ちなみに、お二人はどうやって妥協点を探りました?」
二人は顔を見合わせて、少し悩んだあと、こう言った。
「殺し合いをして、最終的に世界を救った後、養い子に説教されながら膝つき合わせて話し合った」
酔っ払いの戯言にもほどがあったけれど、私は「そっかー」と流すことにした。
モブはロマンティックアセクシャルです多分……。どっちかっていうとロマンティック重視。まあモブだから好きに読んで……。
▲たたむ
来週だよ〜