No.4759

ハロウィンのバキサム
前もソンエリで似たようなの書いたな。
萌えどころが一生変わらん。



 久しぶりに二人の休日が揃ったというのに、朝からキャプテン・アメリカのスーツを手にしたサムを見て、バッキーが気落ちしたのは言うまでもない。
 ため息を我慢して、昨夜の情事の名残すら見せぬ男に「おはよう」と告げれば、同じ言葉と共に「お前もシャワー浴びて来い」と返される。
「その間に朝飯は用意しておくからな」
 そう言われ、朝食だけでも一緒に取れるのかとホッとする。時にはバッキーへの伝言も残さず、文字通り現場へ飛んで行く相手だ。こうして同じ時間を過ごせるだけでも幸運かと思いながら、着替えをサムのクローゼットから取り出した。この部屋にバッキーの着替えが常備されるようになって一年が経つ。もうそろそろ一緒に暮らしても良いんじゃないかというバッキーの問いに、色良い返事があったことはない。
 のろのろと準備をしていればサムの携帯端末に着信があった音がして、バッキーは慌ててバスルームに飛び込んだ。会話を聞かないように蛇口を捻ってまだ冷たいシャワーを浴びる。超人であれば風邪を引く心配もなかく、そして休日だと浮かれていた頭を冷やすのに、秋の終わりを感じさせる水の冷たさは丁度良かったからだ。
 電話が終わるのを見計らってバスルームから出れば、タイミング良くパンが焼き上がったとトースターが告げた。サムの言葉を待たずに狐色に焼けたパンを皿に乗せ、冷蔵庫から取り出したバターと共にテーブルの上に並べると、軽く感謝の言葉をかけられる。そうして視線を合わせた男の柔らかな視線に、バッキーは己のささくれ立った気分が慰められるのを感じていた。
「コーヒーで良いか?」
「ああ」
 サムの問いに頷いて、一足先に椅子に座る。その際、部屋の隅に置かれたスーツケースに目を奪われてしまうのは仕方のないことだ。
 バッキーはコーヒーを淹れるサムの背中に問いかけた。
「夜には帰って来れそうか?」
 注意深く聞いたのに、少しばかり拗ねたような声音になってしまった。サムもそれは気付いただろうに、おそらくあえてバッキーの失敗を指摘せず「夕方には戻ってくる」と答えた。
「ブルースが手を貸してる病院に、ハロウィンのお菓子を届けに行くだけだからな。昼はブルースや子供達と一緒に食べるが、夜は空けてある」
 その言葉に、バッキーはパチリと目を瞬かせた。
「ハロウィン……」
「ああ。まあ、宗教的な事情もあるから、一応は子供達の仮装パーティとしてるけどな」
 笑いながら、サムはバッキーの前にマグカップを置いた。
「俺は特別ゲストらしい」
 そう告げたサムが目を細めてスーツケースを見るので、バッキーは思わず唸りを上げてしまった。
 サムが不思議そうにバッキーを見る。
「どうした?」
「いや、あのな」
 と、バッキーは頬を掻いて、心底困ったように、サムに言った。
「お前が、俺より子供を選ぶやつじゃなかったら、こんなに惚れてなかっただろうに。って思っただけだ」▲たたむ

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