No.881

アガガプ進捗
下書きが出来ているのになぜウダウダしているかというと、食事描写が得意ではないのに慣れようと思ってまた書いて迷走しているからです。
これ食事描写書くたびにいつも言ってるな。いつまでも慣れない。めげない。諦めない。
あと、現実の料理をファンタジー世界の戦場と絡めるのは良くないんじゃないかなあ……。の気持ちになってきてがっつり削るか……になってるからです。

 
 アガレスが戦場に旅立ってから五年が経つ。約束した手紙は一度も届いたことがない。代わりとばかりに届くのは、歳暮や中元のたぐいであった。
 ガープ・ゴエモン様
 宛名の書き文字は毎回違った。印刷の時もある。中身はなんの変哲もない洗剤や食品で、ただ年々量が増えランクが上がっていることには気がついていた。今日届いたのは有名店の点心セットだ。ゆうに五人前はある。毎度のことなのでこの時期になると事前に冷蔵・冷凍庫をなるべく空にするよう努めているが、一人暮らし用のものであればそもそもの容量が足りない。満杯になった冷蔵庫の前でガープは唸った。これは早々に消費するしかないだろう。
 ス魔ホを取り出して、ガープはアガレスと共通の友人にメッセージを送る。悪魔学校を卒業して随分と経ち、交友関係も広がったが、未だに遊ぶとなると真っ先に声をかけるのは問題児クラスの面々だ。急なことであったがジャズとエリザベッタが手を上げた。時間はちょうど逢魔が時。ガープがいつも夕飯の支度を始める時間であった。
 
 
 包子に焼売、ちまきに春巻き。蒸篭の蓋をを開ければふわりと湯気が立ち昇る。半透明の餃子の皮に海老の赤や帆立の白、筍の黄色といった様々な色が透けて、その美しさに喉がなる。
「いただきます」
 三人同時に手を合わせ、ジャズの持ってきた花茶で乾杯をする。酒を開けても良かったが、エリザベッタは下戸であるし、せっかくならば飲茶として楽しみたい。
「あ、美味しい」
 翡翠色した餃子を一口食べたエリザベッタが目を輝かせた。溢れたのはおそらく彼女自身、口にする気はなかった本音である。
 ガープも小籠包のスープをはふはふと飲み込んで頷いた。
「レンジで温めても良いとは書いてあったでござるが、蒸して正解でござったな」
「冷凍なんて信じられないわ」
「この魔イカの湯引きもすげーうまい」
「それは拙者が作ったものでござる」
「さすがねえ」
 ゆったりとお喋りを楽しみながら、三人は思い思いの点心と料理に箸を伸ばす。
「そっちの蒸篭取ってもらって良い?」
「どれでござるか?」
「さっき姐さんが食べてたエビ焼売」
「拙者もひとつ貰うでござる」
 己の皿に丸い焼売をひとつ乗せ、ジャズに蒸篭を手渡した。
「そういやこの蒸篭もセットに付いてきたの?」
「前にイルマ殿たちと家で映画を観た時に、クララ殿が大量の肉まんと一緒に持ってきてくれたのを貰ったでござる」
「ああ、なるほどね」
 基本的に問題児クラスが集まって、誰かの家で食べたり飲んだりする時は、各自で食料や飲料を用意する。リードやアリスなどは既製品を買ってくるが、クララは己で作った料理を持ち込むことが多かった。
「料理が出来るってすごいわよねえ。私なんてすぐに出来合いで済ませちゃうわ」
「いやいや、ちゃんと食べようと思うだけ偉いっすよ。俺なんかすぐ酒で済ませちゃって、この前検診で引っかかってアルコール控えろって言われたところ」
「不安になるような生活をしないでほしいでござる……」
「まあストレスの影響も大きいんだけど」
 ガープとエリザベッタの脳裏に、ジャズの師匠である悪魔が浮かんだ。卒業後も仕事の都合で関わることが多く、アロケルと共に苦労していると聞く。
 程よく冷めたちまきを取りながら、ジャズがひとつため息を吐く。
「この前も戦場で無茶したドロドロ兄弟の尻拭いをさせられそうになったところ」
 そう言って蓮の葉を開けば、卵黄を絡めた餅米が現れる。ジャズが箸で二つに分ければころりとした肉が飛び出した。南部で好まれる味のちまきだとすぐに分かった。
 店の名前ですでに理解していたことだが、北の戦場にいるアガレスが南の料理を送ってくることが、今更ながらに不思議であった。
 ▲たたむ

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