No.1595

#アガガプ

ヒロゴエ
生活



 吾妻がビーズクッションの手入れをしている。彼の背丈より大きなものだ。元はリモートワーク中の休憩用に買ったものだが、仕事部屋だと寝過ぎてしまうからと今はリビングに置いている。
 賀風は時折手伝いながら吾妻の姿を見ている。寝具の扱いは吾妻の方が慣れているので、請われた時以外は手を出さない。
 吾妻の手は滞りなく動く。カバーを外して洗濯をし、中のビーズを詰め直す。カバーは洗い替え用のものも白色だ。
 賀風がおやつの準備を終えてしばらく経ってから手入れが終わる。賀風はお茶と茶菓子をお盆に乗せて吾妻に声をかけた。今日のおやつは豆大福だ。
 お疲れ様でござる。と言えば、吾妻はうん。と頷き、寝てみる? と言った。
「いいのでござるか?」
「いいよ。いつも俺が使ってるし」
 それなら、と賀風はお盆を置いてピカピカに手入れされたクッションの上に寝転がった。身体が沈んでいく。ふふ。と笑う。シーツからはほんのりと石鹸の匂いがした。
「どう?」
「最高でござる」
 賀風が親指を立てれば吾妻は笑った。満足そうに笑った。


▲たたむ

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