タグ「ソンエリ」を含む投稿[15件]
次回ノアの休日か何かあったらローグライク関係ないソンエリ書きたい気持ちはある。#ソンエリ
エリジウム、ロドスの女の子たちとワイワイしてて欲しい〜〜〜。ネイルとか化粧とか普通にしてて欲しい。そういう女の子とエリジウムなソンエリ描きたい気持ちある。
ソーンズも普通に女の子とワイワイしてて欲しいし薬物繋がりで化粧品について詳しくなってて欲しいしその知識から女の子に喋りかけられて、自然とその知識が分厚くなってて欲しい。恋愛対象として一切見てないし相手の恋愛模様を把握しつつ遠慮なく年齢相応にじゃれ合う若者が好きなので。
これは女の子たちに顔だけならともかく。って思われてるソンエリ。
#ソンエリ
ソーンズも普通に女の子とワイワイしてて欲しいし薬物繋がりで化粧品について詳しくなってて欲しいしその知識から女の子に喋りかけられて、自然とその知識が分厚くなってて欲しい。恋愛対象として一切見てないし相手の恋愛模様を把握しつつ遠慮なく年齢相応にじゃれ合う若者が好きなので。
これは女の子たちに顔だけならともかく。って思われてるソンエリ。
#ソンエリ
#ソンエリ #リクエスト
リクエスト(同衾するソンエリ)です。ありがとうございました。
捏造過多。ルームシェアしてます。
部屋の扉が開かれた。帰ってきたのは二人部屋を共有しているソーンズだ。予定日を数日過ぎての帰還である。ここ数週間ほどドクターについてサルゴンを動き回っていた彼は、目の下に隠しきれない疲労を滲ませていた。
「シャワーを浴びてくる」
そう言うが早いか、荷物を乱雑に床に置き、着替えを引っ張り出したソーンズは背を翻す。ベットで本を読んでいたエリジウムが慌てて「荷解きはしておくかい?」と尋ねると、振り向きもせずに「頼む」と言って部屋を出た。
バタン。と音を立てて扉が閉まる。エリジウムはしばらく閉まった扉を見つめていたが、やがてゆるゆるとソーンズの荷物に手を伸ばした。ソーンズの荷物は砂埃に汚れ、バックパックを開ければ日に焼けた砂の匂いがする。
エリジウムとソーンズがロドスの二人部屋で同居を始めたのは数ヶ月前のことだ。他組織との連携による外部オペレーターの増加や鉱石病患者受け入れの拡大を経て宿舎の改装が決まり、同時に幾組かのルームシェアが募集されたのだ。それまで予備隊以外は一人部屋を使っていた為なかなか募集は埋まらなかったが、恋人同士となって一年が経過していた二人は丁度いいタイミングだからと手を挙げた。
とはいえ二人が恋人であることを誰にも明かしていないので、名目上は友人同士のルームシェアだ。ロドスには様々な種族や出身地の者が暮らしており、中には異なる種族間での恋愛や、同性愛者に強い偏見や差別感情を抱く者もいる。とはいえ何も言わなければ異性愛者として見られてしまうからか、今のところ恋愛関係を疑われたことはない。
むしろ、二人でいると何かと騒ぎを起こしがちなので、そちらを心配されがちだ。確かに同居を始めてから酒に飲まれてしまったことはあるし、種族や育ちによる生活習慣の違いから多少の小競り合いも起こしたが、今のところは概ね順調にやっている。
エリジウムは荷解きをしながらひとつ伸びをした。無駄を嫌うソーンズの荷物はエリジウムが遠征に出かけるときよりもずっと少ない。ものの十数分で片付けを終わらせると、エリジウムは最後に通信機器を手に取った。小さなそれは、以前エリジウムがソーンズに与えたものだ。サルゴンという土地の特性上、防ぎきれなかった砂汚れが付着している。ソーンズが部屋に戻ってきたらメンテナンスをしてもいいか尋ねようと考えて、エリジウムは荷物から落ちた砂埃を掃除するために立ち上がった。
ソーンズが帰ってきたのはそれからもう三十分ほど経った頃だ。
掃除を終えたエリジウムはすでにベッドの上で本を読む作業に戻っており、眠さのせいか足元が覚束ないソーンズを見て「遅かったね」と告げた。
「医療部に捕まってな。荷解きを任せて悪かった」
と、その言葉は半分ほどが欠伸に取って変わられる。何の気なしに眺めていれば、ソーンズがエリジウムにのしかかってきた。
「今日はシャワー浴びてないから自分のベッドで寝たほうが良いよ」
ロドスが砂漠地帯に滞在中は水の使用制限がかかるため、休暇中のオペレーターはシャワーなどを出来る限り控えている。エリジウムも今日はシャワーを浴びず、身体を軽く拭くだけで眠るつもりであったが、任務の汚れをさっぱりと落としたソーンズに抱きつかれれば気になりもする。
しかしソーンズは眠気の滲んだ声で「構わない」と言って、エリジウムの肩口に顔を寄せた。
「それなら良いけど」
と告げて、エリジウムもソーンズの背中に手を回す。シャンプーの匂いがする髪がエリジウムの頬をくすぐった。ホコホコと温かい身体からエリジウムにも眠気が押し寄せてくる。
「そういえば」
とエリジウムは小さく独りごちた。けれど抱きしめあっていれば、その言葉もソーンズに拾われてしまう。「どうした?」聞かれて、その律儀さに申し訳ような、嬉しいような気持ちでエリジウムは答えた。
「おかえりって言ってないと思ってさ」
と告げると、ソーンズが納得がいったように頷いて「ただいま」と言った。
エリジウムは彼のその言葉を聞くと、どうしてか、少しだけ泣きたくなる。
ソーンズには気難しい部分があり、一緒にいて疲れる時も、一人になりたい時も、彼の長期の任務で一人になってほっとする時もある。イベリア出身のリーベリとエーギルであれば、一生をかけても埋まらない溝を実感し、逃げ出したくなる時もある。
けれど同居をして初めてソーンズが任務から帰ってきた時、ただいま。と告げる彼を見て、エリジウムはひどく安心した。
安心してしまったのだ。
「おかえり」
数ヶ月一緒に暮らしても、まだぎこちないそれを待っていたように、ソーンズの力が抜けて、やがて規則正しい寝息が聞こえてきた。
おかえり。ともう一度繰り返し、エリジウムは目を閉じて、ソーンズの髪に鼻を埋めた。
洗い立てのソーンズの髪からは、石鹸の匂いに混じって、どこか懐かしい、塩辛い匂いがした。
▲たたむ
リクエスト(同衾するソンエリ)です。ありがとうございました。
捏造過多。ルームシェアしてます。
部屋の扉が開かれた。帰ってきたのは二人部屋を共有しているソーンズだ。予定日を数日過ぎての帰還である。ここ数週間ほどドクターについてサルゴンを動き回っていた彼は、目の下に隠しきれない疲労を滲ませていた。
「シャワーを浴びてくる」
そう言うが早いか、荷物を乱雑に床に置き、着替えを引っ張り出したソーンズは背を翻す。ベットで本を読んでいたエリジウムが慌てて「荷解きはしておくかい?」と尋ねると、振り向きもせずに「頼む」と言って部屋を出た。
バタン。と音を立てて扉が閉まる。エリジウムはしばらく閉まった扉を見つめていたが、やがてゆるゆるとソーンズの荷物に手を伸ばした。ソーンズの荷物は砂埃に汚れ、バックパックを開ければ日に焼けた砂の匂いがする。
エリジウムとソーンズがロドスの二人部屋で同居を始めたのは数ヶ月前のことだ。他組織との連携による外部オペレーターの増加や鉱石病患者受け入れの拡大を経て宿舎の改装が決まり、同時に幾組かのルームシェアが募集されたのだ。それまで予備隊以外は一人部屋を使っていた為なかなか募集は埋まらなかったが、恋人同士となって一年が経過していた二人は丁度いいタイミングだからと手を挙げた。
とはいえ二人が恋人であることを誰にも明かしていないので、名目上は友人同士のルームシェアだ。ロドスには様々な種族や出身地の者が暮らしており、中には異なる種族間での恋愛や、同性愛者に強い偏見や差別感情を抱く者もいる。とはいえ何も言わなければ異性愛者として見られてしまうからか、今のところ恋愛関係を疑われたことはない。
むしろ、二人でいると何かと騒ぎを起こしがちなので、そちらを心配されがちだ。確かに同居を始めてから酒に飲まれてしまったことはあるし、種族や育ちによる生活習慣の違いから多少の小競り合いも起こしたが、今のところは概ね順調にやっている。
エリジウムは荷解きをしながらひとつ伸びをした。無駄を嫌うソーンズの荷物はエリジウムが遠征に出かけるときよりもずっと少ない。ものの十数分で片付けを終わらせると、エリジウムは最後に通信機器を手に取った。小さなそれは、以前エリジウムがソーンズに与えたものだ。サルゴンという土地の特性上、防ぎきれなかった砂汚れが付着している。ソーンズが部屋に戻ってきたらメンテナンスをしてもいいか尋ねようと考えて、エリジウムは荷物から落ちた砂埃を掃除するために立ち上がった。
ソーンズが帰ってきたのはそれからもう三十分ほど経った頃だ。
掃除を終えたエリジウムはすでにベッドの上で本を読む作業に戻っており、眠さのせいか足元が覚束ないソーンズを見て「遅かったね」と告げた。
「医療部に捕まってな。荷解きを任せて悪かった」
と、その言葉は半分ほどが欠伸に取って変わられる。何の気なしに眺めていれば、ソーンズがエリジウムにのしかかってきた。
「今日はシャワー浴びてないから自分のベッドで寝たほうが良いよ」
ロドスが砂漠地帯に滞在中は水の使用制限がかかるため、休暇中のオペレーターはシャワーなどを出来る限り控えている。エリジウムも今日はシャワーを浴びず、身体を軽く拭くだけで眠るつもりであったが、任務の汚れをさっぱりと落としたソーンズに抱きつかれれば気になりもする。
しかしソーンズは眠気の滲んだ声で「構わない」と言って、エリジウムの肩口に顔を寄せた。
「それなら良いけど」
と告げて、エリジウムもソーンズの背中に手を回す。シャンプーの匂いがする髪がエリジウムの頬をくすぐった。ホコホコと温かい身体からエリジウムにも眠気が押し寄せてくる。
「そういえば」
とエリジウムは小さく独りごちた。けれど抱きしめあっていれば、その言葉もソーンズに拾われてしまう。「どうした?」聞かれて、その律儀さに申し訳ような、嬉しいような気持ちでエリジウムは答えた。
「おかえりって言ってないと思ってさ」
と告げると、ソーンズが納得がいったように頷いて「ただいま」と言った。
エリジウムは彼のその言葉を聞くと、どうしてか、少しだけ泣きたくなる。
ソーンズには気難しい部分があり、一緒にいて疲れる時も、一人になりたい時も、彼の長期の任務で一人になってほっとする時もある。イベリア出身のリーベリとエーギルであれば、一生をかけても埋まらない溝を実感し、逃げ出したくなる時もある。
けれど同居をして初めてソーンズが任務から帰ってきた時、ただいま。と告げる彼を見て、エリジウムはひどく安心した。
安心してしまったのだ。
「おかえり」
数ヶ月一緒に暮らしても、まだぎこちないそれを待っていたように、ソーンズの力が抜けて、やがて規則正しい寝息が聞こえてきた。
おかえり。ともう一度繰り返し、エリジウムは目を閉じて、ソーンズの髪に鼻を埋めた。
洗い立てのソーンズの髪からは、石鹸の匂いに混じって、どこか懐かしい、塩辛い匂いがした。
▲たたむ
#ソンエリ
再掲
「ひとつだけ先に言っておきたいことがあって」
そう切り出したエリジウムがソーンズの隣に腰掛ける。ベッドのスプリングが音を立て、軽く触れた肩に小さく息を飲み込んだ。
動揺を悟られないように、ソーンズが「なんだ?」と問いかけると、エリジウムは彼にしては珍しく僅かに言葉に迷うような素振りを見せた後「鉱石病のことなんだけど」と言った。何回も繰り返した議題ではあるが、ソーンズはこの議題を無視も軽んじもしないと決めている。すぐに言葉を発しようとしたソーンズは、しかしエリジウムの手に口を塞がれた。
「待って待って。僕も何度も同じ議論はしないし、君の今までの言葉をなかったことにはしたくないよ。ただ、言ってなかったことがあったと思ってさ」
「……なんだ」
指の隙間から問いかければ「デコレーションのことだよ」とエリジウムは告げた。
そしてソーンズの口から手を離し、服の裾を持ち上げる。
「これ」
何の衒いもなく晒された肌に心臓が跳ねた。通信員としてあれこれと機材を持ち運ぶ必要があるので、エリジウムの身体には程よく筋肉が付いている。それは一見健康な男の身体にしか見えない。しかし布一枚剥いでしまえば、体表に浮かぶ異質な部分がどうしたって目についた。
半透明の黒い鉱石。
ソーンズはゆっくりと息を吐いた後、視線があちこちに飛んでしまいそうになるのをグッと堪えて「体表面の鉱石は、触れても鉱石病に感染しない」と告げた。
「知ってるよ」とエリジウムは応えた。
「その心配じゃなくてさ」
「何の心配だ?」
「これ、鉱石だから硬いんだよ」
エリジウムは黒い鉱石を指先で突いてみせた。
「うっかり触ったら、それだけで皮膚が切れちゃうくらいにはね」
ソーンズは虚を突かれた。そんなことは考えたこともなかったからだ。エリジウムはさらに続けた。
「体表にできたばかりの頃に、うっかり触って指を切ったことがあるんだよ。だから、ほら、その……」
エリジウムがひとつ咳を落とす。
「この後、君がうっかり触って怪我したら困るからさ」
そう告げた声は、いつもの軽快さを欠いている。
ソーンズはパチリと瞬きをした。
そして僅かに考えた後「触っても良いか?」と手を伸ばす。
「鉱石に?」
「ああ」
「良いけど、さっき言ったこと気をつけてね」
「分かっている」
指先で、半透明の黒い鉱石に触れる。確かにエリジウムの言う通り固く、自然と割れたような縁は細かく波打っており、考えなしに触れれば手を傷つけるだろう。
「感覚はあるのか?」
「身体に埋まってるからね。鉱石自体にはないけど、触られると周辺の皮膚が突っ張るような感覚はあるよ」
「例えばうっかり強く押したとして、お前の内臓か周辺の肉や皮膚に傷がつくことは?」
「可能性あるかな。感染生物との交戦で倒れた時にうっかりそこを下にして、内側に響いた感覚があったから」
「そうか」
ソーンズはエリジウムの鉱石から手を離した。
「それなら気をつける」
「それならって」
服を整えたエリジウムが呆れた顔をした。
「君に怪我して欲しくなくて言ったんだけど」
「知っている。その点でも気を付けるが、ただ、俺にはそちらの方が重要だっただけだ」
嘘である。
本当は「切り傷くらいならすぐに治るのは知ってるだろう」という言葉がソーンズの口から出かかった。彼がその体表に出来た不本意なデコレーションのせいでソーンズが傷付くことを恐れ、無意識にか意識的にか引いた線の内に、踏み込むような言葉であった。
エリジウムに触ることができない方が嫌だと。
けれどそれはソーンズのエゴだ。そして同時に、我を通し彼を傷つけるほど暴力的になることをソーンズは良しとしない。それをしたとして、エリジウムがどんな顔をするか、想像は出来なかったが、見たいとも思わなかった。
「他に何か言いたいことはあるか?」
ソーンズの言葉に、少しだけ眉根を寄せたエリジウムが首を横に振った。
「ないよ」
「触れても?」
返事の代わりに、ひとつ、エリジウムから軽い口付けが落とされた。それに応えながら服の裾から手を滑り込ませれば僅かに硬い感触があり、その感触に鉱石病への苛立ちを覚えながらも、ソーンズはそれを避けて強くエリジウムの身体をかき抱いた。
至近距離で見つめたリーベリは笑っており、ソーンズはふと、その顔が見たかったのだと思い至った。
これがソーンズの恋だった。
▲たたむ
再掲
「ひとつだけ先に言っておきたいことがあって」
そう切り出したエリジウムがソーンズの隣に腰掛ける。ベッドのスプリングが音を立て、軽く触れた肩に小さく息を飲み込んだ。
動揺を悟られないように、ソーンズが「なんだ?」と問いかけると、エリジウムは彼にしては珍しく僅かに言葉に迷うような素振りを見せた後「鉱石病のことなんだけど」と言った。何回も繰り返した議題ではあるが、ソーンズはこの議題を無視も軽んじもしないと決めている。すぐに言葉を発しようとしたソーンズは、しかしエリジウムの手に口を塞がれた。
「待って待って。僕も何度も同じ議論はしないし、君の今までの言葉をなかったことにはしたくないよ。ただ、言ってなかったことがあったと思ってさ」
「……なんだ」
指の隙間から問いかければ「デコレーションのことだよ」とエリジウムは告げた。
そしてソーンズの口から手を離し、服の裾を持ち上げる。
「これ」
何の衒いもなく晒された肌に心臓が跳ねた。通信員としてあれこれと機材を持ち運ぶ必要があるので、エリジウムの身体には程よく筋肉が付いている。それは一見健康な男の身体にしか見えない。しかし布一枚剥いでしまえば、体表に浮かぶ異質な部分がどうしたって目についた。
半透明の黒い鉱石。
ソーンズはゆっくりと息を吐いた後、視線があちこちに飛んでしまいそうになるのをグッと堪えて「体表面の鉱石は、触れても鉱石病に感染しない」と告げた。
「知ってるよ」とエリジウムは応えた。
「その心配じゃなくてさ」
「何の心配だ?」
「これ、鉱石だから硬いんだよ」
エリジウムは黒い鉱石を指先で突いてみせた。
「うっかり触ったら、それだけで皮膚が切れちゃうくらいにはね」
ソーンズは虚を突かれた。そんなことは考えたこともなかったからだ。エリジウムはさらに続けた。
「体表にできたばかりの頃に、うっかり触って指を切ったことがあるんだよ。だから、ほら、その……」
エリジウムがひとつ咳を落とす。
「この後、君がうっかり触って怪我したら困るからさ」
そう告げた声は、いつもの軽快さを欠いている。
ソーンズはパチリと瞬きをした。
そして僅かに考えた後「触っても良いか?」と手を伸ばす。
「鉱石に?」
「ああ」
「良いけど、さっき言ったこと気をつけてね」
「分かっている」
指先で、半透明の黒い鉱石に触れる。確かにエリジウムの言う通り固く、自然と割れたような縁は細かく波打っており、考えなしに触れれば手を傷つけるだろう。
「感覚はあるのか?」
「身体に埋まってるからね。鉱石自体にはないけど、触られると周辺の皮膚が突っ張るような感覚はあるよ」
「例えばうっかり強く押したとして、お前の内臓か周辺の肉や皮膚に傷がつくことは?」
「可能性あるかな。感染生物との交戦で倒れた時にうっかりそこを下にして、内側に響いた感覚があったから」
「そうか」
ソーンズはエリジウムの鉱石から手を離した。
「それなら気をつける」
「それならって」
服を整えたエリジウムが呆れた顔をした。
「君に怪我して欲しくなくて言ったんだけど」
「知っている。その点でも気を付けるが、ただ、俺にはそちらの方が重要だっただけだ」
嘘である。
本当は「切り傷くらいならすぐに治るのは知ってるだろう」という言葉がソーンズの口から出かかった。彼がその体表に出来た不本意なデコレーションのせいでソーンズが傷付くことを恐れ、無意識にか意識的にか引いた線の内に、踏み込むような言葉であった。
エリジウムに触ることができない方が嫌だと。
けれどそれはソーンズのエゴだ。そして同時に、我を通し彼を傷つけるほど暴力的になることをソーンズは良しとしない。それをしたとして、エリジウムがどんな顔をするか、想像は出来なかったが、見たいとも思わなかった。
「他に何か言いたいことはあるか?」
ソーンズの言葉に、少しだけ眉根を寄せたエリジウムが首を横に振った。
「ないよ」
「触れても?」
返事の代わりに、ひとつ、エリジウムから軽い口付けが落とされた。それに応えながら服の裾から手を滑り込ませれば僅かに硬い感触があり、その感触に鉱石病への苛立ちを覚えながらも、ソーンズはそれを避けて強くエリジウムの身体をかき抱いた。
至近距離で見つめたリーベリは笑っており、ソーンズはふと、その顔が見たかったのだと思い至った。
これがソーンズの恋だった。
▲たたむ
#ソンエリ
再掲
向かいの席で作戦記録の編集をしていた後輩が、サッと頬を赤らめた。
何かあったのかと声をかければ、わずかに気まずそうな顔をする。モゴモゴと口籠った後、彼は端末をこちらに向けた。画面の中で流れているのは先日撮ったばかりの映像だ。一~二分ほど早戻しされた記録の中には、防衛を終えドクターの元へと帰還するオペレーター達が映っている。不安定に揺れ動いていることから記録用ドローンを誰かが手に持っていることが窺えた。先日故障した一台を、近くにいたオペレーターに回収してもらったことを思い出す。
どうにも酔ってしまいそうな映像の中、一際目立っているのは青空にたなびく旗だった。旗手の掲げる旗である。テンニンカにせよエリジウムにせよサイラッハにせよ、作戦が終わった後も、旗手はこうして旗を掲げていることが良くあった。帰還するオペレーター達の目印になるようにと、誰に頼まれたわけでもなく、彼らは自分の意思で己の旗を掲げ続けた。
映像に映っていたのはエリジウムだった。旗手の中でも背の高さから一際目立つ男である。
やがて彼の顔が視認できるくらいの距離に近づいた時、ふとエリジウムの視線が顔がこちらを向いて、カメラの持ち主に気付いたのか、わずかにその目が見開かれた。
「おかえり、ブラザー!」
その様を、何と言おう。
青い空もたなびく旗も、全てが味気なく感じるような光景だった。まっすぐな好意というものをひとつの形にしたら、こうなると思わせるような表情であり。
思わず喉から唸り声が出た。
「どうしましょう。これ」
後輩からの問いかけに、少しばかり考えた後、とりあえずこの部分だけ消してくれ。と指示をする。
「この表情は、あの掲げられた旗みたいに不特定多数の誰かに向けてのものじゃないから」
作戦記録の中にあるのは不適切だよ。と告げて、己の赤くなっただろう顔を、手でパタパタと仰いでみせた。
▲たたむ
再掲
向かいの席で作戦記録の編集をしていた後輩が、サッと頬を赤らめた。
何かあったのかと声をかければ、わずかに気まずそうな顔をする。モゴモゴと口籠った後、彼は端末をこちらに向けた。画面の中で流れているのは先日撮ったばかりの映像だ。一~二分ほど早戻しされた記録の中には、防衛を終えドクターの元へと帰還するオペレーター達が映っている。不安定に揺れ動いていることから記録用ドローンを誰かが手に持っていることが窺えた。先日故障した一台を、近くにいたオペレーターに回収してもらったことを思い出す。
どうにも酔ってしまいそうな映像の中、一際目立っているのは青空にたなびく旗だった。旗手の掲げる旗である。テンニンカにせよエリジウムにせよサイラッハにせよ、作戦が終わった後も、旗手はこうして旗を掲げていることが良くあった。帰還するオペレーター達の目印になるようにと、誰に頼まれたわけでもなく、彼らは自分の意思で己の旗を掲げ続けた。
映像に映っていたのはエリジウムだった。旗手の中でも背の高さから一際目立つ男である。
やがて彼の顔が視認できるくらいの距離に近づいた時、ふとエリジウムの視線が顔がこちらを向いて、カメラの持ち主に気付いたのか、わずかにその目が見開かれた。
「おかえり、ブラザー!」
その様を、何と言おう。
青い空もたなびく旗も、全てが味気なく感じるような光景だった。まっすぐな好意というものをひとつの形にしたら、こうなると思わせるような表情であり。
思わず喉から唸り声が出た。
「どうしましょう。これ」
後輩からの問いかけに、少しばかり考えた後、とりあえずこの部分だけ消してくれ。と指示をする。
「この表情は、あの掲げられた旗みたいに不特定多数の誰かに向けてのものじゃないから」
作戦記録の中にあるのは不適切だよ。と告げて、己の赤くなっただろう顔を、手でパタパタと仰いでみせた。
▲たたむ
再掲
夢と分かる夢を見た。
夢の中でソーンズは不惑を過ぎており、隣にいるエリジウムにも同じだけの過ぎ去った年月がその身体に刻まれていた。
二人が歩いていたのはロドスの中だ。幾度も修繕と改装が繰り返されてはいたが、絶え間ない人の声と、動き続ける機械音は以前と変わることがない。
視線に気付いたのだろう。エリジウムが「どうかした?」と首を傾げたのでソーンズは「これは夢か?」と問いかけた。エリジウムがニコリと笑う。
「夢とも言えるし、そうでないとも言えるね」
ゴポリ。とエリジウムが口を開く度に音がした。
「この世界は幾重にも折り重なり混じり合い、多数の分岐は過去を過ぎ去り未来を追い越している。そして海は折り重なった世界の中で生きるもの死んだものが最後に流れ着く場所だよ。彼らが海の水に溶けて、海の水を飲んだ君に、君の知識から君の望む姿を見せたのではなく、過去あるいは未来を見せているとは思わなかったのかい? 原石が告げる予言のように」
「あいにく、今回が初めてじゃないからな」
笑う相手に、ソーンズはため息を吐いてみせた。
「ケルシーからすでに知識は得ている。お前は過去で、俺はもう未来にいる」
「ああ、なるほど。君の分岐は随分と遠いところにあるみたいだ」
「だから、もう俺が望む夢はとうに見飽きているんだ。お前に頼らなくとも良い」
絶望は、すでに何度も味わっている。
鉱石病。不治の病。ソーンズの親友を蝕むもの。
オペレーターとしてロドスに所属していた彼の時間が少ないことを、もうソーンズはずっと前から、彼を友人と定めた時から知っていた。ふとしたきっかけからスペクターのことを知り、ケルシーに相談をしたことさえある。スペクターに施したことと、逆のことはできないかと。己が海の水を飲んだことを彼女は診断結果などから勘づいていて、そしてソーンズに知識を与えた。同時に選択をするのは自分自身だと突き放されたような、多くを背負う彼女に、新たなものを背負わせたような気もした。
しかしそれらはもう過ぎ去った過去だ。
そしてその頃よく見た夢が、未来でも、あの男が生きている夢だった。
目の前の存在を見る。不惑を過ぎた男の目尻に笑い皺が刻まれている。よく笑う男であった。笑い皺はその証明だ。
「俺はもう、この先を知っている」
「僕はいらない?」
「ああ」
時間と大海の流れは絶えず、そこに浮かぶ人々も、一箇所に留まることはない。
ソーンズの答えに、夢の中のエリジウムは「そっか」と告げた。「残念だね」という言葉に、泡が弾ける音が重なる。
パチン。という音と共に、目が覚めた。
「起きてください、ソーンズ先生」
肩を揺らされて、ソーンズはゆるゆると瞼を開けた。蛍光灯の眩しさに目が眩む。やがて開けた視界に映ったのは。最近ロドスに入ってきたばかりの若いオペレーターだ。
彼はソーンズが覚醒したことを知ると、机の上に小包を置いた。
「お疲れのところすみませんが、お届けものです。サインください」
「……ああ」
一瞬、夢の続きかと思い動きが遅れた。不惑をすぎ知命が見える年になると、どうにも色んなことに区別が付きづらくなって困ると頭を掻きながらペンを持ち宛名を確認してサインを入れれば、若いオペレーターがありがとうございます。と笑った。
そして仕事は済んだはずなのに、彼はソーンズの荷物を指差して「トランスポーターの方からですか?」と問いかけてきた。
「鉱石病患者さんの支援のために、いろんな場所に行ってらっしゃる方からなんですよね」
と、告げるその好奇心が抑えきれない様子に苦笑する。
ロドスが鉱石病の治療のために、さまざまな場所にオペレーターを派遣していることは周知だが、それもまだ全世界とは言い難い。時にはたどり着くことさえこんな場所に出向くこともあり、そうした場合、安全な行路の確保や情報収集のため、所属するオペレーターに情報提供や荷物の搬送を頼むことがある。
そしてソーンズがロドス所属のトランスポーターの一人と懇意で、そのトランスポーターから僻地の様々な品や映像送ってもらっては、ロドス内で共有しているのは有名だ。
「……そうだな。今でもロドスの特殊部隊と兼業しているが、ここ数年はトランスポーター業の方が多いか」
何せ、僻地にも進んで行きたがるやつだから。と告げながら、ソーンズはわざと彼の目の前で小包を開けてやる。そこに入っていたのは、記録媒体だ。
「電波の通じる場所なら通信を寄越してくるが、そうもいかない場所もある。そういう場所は、こうして記録を送ってくる」
─ ─君にも見て欲しいんだよ。
そう笑った男の顔を覚えている。様々な危機を乗り越え、様々な犠牲を払い、それでも完治ができない鉱石病にかかりながら明日を生きる男は、ソーンズが若き頃に見ていた夢の姿などとは全く違う姿で今を生きている。
己の夢を叶えた姿で生きている。
「写っているのは、山か、川か、砂漠か」
あるいは海か、はたまた全く違う景色か。それは蓋を開けるまでわからない。
「見てみるか?」
と聞けば、若いオペレーターはこくこくと首を縦に振る。その姿にやはり笑いながら、ソーンズは記録媒体を己のPCに繋げた。
青い空。白い雲。どこまでも広がる広大な山脈。吐き出した息は白く、昔携えていたものよりずっと軽く作られた旗が、風に揺れる。
戦友からの通信が入り『極地』の名を持つ男は鉱石病の薬を飲み込むと立ち上がった。
その目に映るのは、夢よりも夢のような現実だ。
「さあて、次はどこに行くのかな!」
▲たたむ